世にあふれる「エコ」。
「エコマーク」「エコライフ」「エコ活動(アクション)」「エコ商品」「エコクラブ」「エコカー」「エコホーム」「エコ住宅」・・・etc.
「エコカー」というと、「燃費のいい車」「電気自動車(EV)」が思い当たります。「エコ住宅(ハウス)」というと、自然素材を多用した住宅、環境負荷の少ない設備機器を搭載した「高気密高断熱住宅」を連想させます。「エコ」を冠するのは「うちの商品はエコだぞ、環境に優しいぞ」という一種のPRというか「ブーム」です。
カーボンニュートラルをめざした国の住宅施策のキーワードは [ZEH] です。「ゼッチ」と読みます。
ZEH とは、Net Zero Energy House (ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称。その定義は、
「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」
と記載されています。(出典:経済産業省 資源エネルギー庁 ZEHの定義(改訂版)平成31年2月)
1.「外皮の断熱性能等を大幅に向上させる」とは、「住宅の外壁や窓、屋根、床下など外皮の断熱性能を大幅に高める」と言い換えられます。
2.「高効率な設備システムの導入」とは、「省エネ性能の高い機器(暖房・冷房・換気・照明・給湯)を導入」と言い換えます。
3.「再生可能エネルギー等を導入する」ということは、一般的に「太陽光発電など再生可能エネルギー等を導入すること」を言います。
以上を通訳すると ZEH の定義は、
「住宅の外壁や窓、屋根、床下など外皮の断熱性能を大幅に高めた上で、省エネ機器(暖房・冷房・換気・照明・給湯)を導入して、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー(20%以上の削減)を実現し、太陽光発電など再生可能エネルギー等を導入することにより、年間のエネルギー消費量の収支がゼロ以下とすることを目指した住宅」ということになります。
(環境省「住宅脱炭素NACVI」より抜粋)
この「収支がゼロ以下とする」は、計算ソフトによる机上の計算であって、実費を保証するものではないことに注意が必要です。
収支計算の収入にあたる太陽光発電は、発電量が一定でないこと、設置する地域や方角によって出力に差が出ることに留意する必要があります。
また支出として計上する電気代には暖房・冷房・換気・照明・給湯機器以外のパソコンやテレビ、冷蔵庫、電子レンジ・洗濯乾燥機などの家電、EV(電気自動車)の充電等に要する消費電力は含まれないことも理解する必要があります。
さらに、太陽光発電を導入した場合はメンテナンス費用など、初期費用以外にも支出が発生します。
パワーコンディショナーの寿命は15年程度、太陽光パネルの寿命は20〜30年程度とされています。
将来、交換処分費用が発生することも収支計画に含めておくことをお薦めします。
そもそも「外皮の断熱性能等を大幅に向上」「高効率な設備システムの導入」「再生可能エネルギー等を導入」これらすべてを満足させるためには、従来の家づくりに比べて相当な初期費用を加算する必要があります。
ZEHを普及させるため、自治体は補助金を用意していますが、こうした支援を受けたとしても将来にわたって収支がゼロになるとは思えません。
長期優良住宅の認定を受けると大幅な税制優遇を受けられます。認定を受けるためにさらに初期費用と期間が加算される場合があります。ローンが完済する前に屋根や外壁の修繕のために、まとまった出費が必要な時期が訪れることも考慮した方がいいでしょう。。税制優遇はメリットばかりではありません。
「暑さや寒さをガマンして省エネを行うのではなく、快適に暮らしながら省エネルギーを実現して脱炭素社会に貢献することができます。」
と環境省のウェブサイトは優しく誘っていますが、住宅ローンをお考えの方は少し用心したほうがいいと思います。
国土交通省のロードマップによると、国は2030年度に着工するすべての住宅がZEH基準を満たすことを目標にしています。
ZEHが義務化される前に、少し緩い基準で脱炭素をめざすか、潔くZEHの波に乗るか、決断までまだ時間があります。悔いが残らぬよう、慎重にご検討下さい。
「気候風土適応住宅」とは、地域の気候及び風土に応じた@様式・形態・空間構成、A構工法、B材料・生産体制、C景観形成、D住まい方などの特徴を多面的に備えている住宅であることにより、外皮基準に適合させることが困難であるものとして国土交通大臣が定める基準に適合する住宅をいいます。
(出典: 一般社団法人 環境共生まちづくり協会
気候風土適応住宅の独自基準策定ガイドライン (令和6年7月)
)
気候風土適応住宅は、高気密高断熱住宅ではありません。また、現行の断熱性能基準を必ずしも満たす住宅でもありません。上記ガイドラインの説明書にあるように、外皮基準に適合させることが困難であるものとして国土交通大臣が定める基準に適合する住宅をいいます。
私が思い描く未来を生きる人々が快適に暮らせる社会の姿の参考としてご紹介しました。
2026年2月7日