自然と折り合いをつけて快適に暮らすためには、自然に逆らわないことです。
雨は空から降ります。水は高いところから低いところへ流れます。
雨漏りしない家をつくるためには、空から降る雨を確実に地上に流すことです。
雨水の処理を考えるにあたり、「屋根」と「外壁」の役割を分けて考える必要があります。屋根の形は重要です。
屋根の形は、雨水が流れやすいよう適度に傾ける必要があります。
さらに雨水が流れ落ちる屋根の末端は外壁に連続させず、「軒の出」を設けて雨水を「切る」「処理する」必要があります。
これを「水切り」「雨仕舞(あまじまい)」といいます。
外壁が垂直に立つ構造体であれば、外壁は屋根に降った雨水の処理を負担しません。
一方、屋根をビルの屋上のようにほぼ水平にすると、屋根に水が溜まりやすくなって雨漏りの原因となります。
この原理原則は、弥生式住居の太古から変わりません。
快適な暮らしを送るためには、自然に逆らわず、受け流すことです。自然体がいいということです。
日本の夏は高温多湿です。地面の湿気を嫌って高床式の住居が生まれました。 礎石を柱や土台の下に据えて床を浮かせることによって木材を腐朽から守りました。 自然と付きあう暮らしの作法といえます。
日本の住居には「窓」「ドア」という概念がありませんでした。
開口部や仕切りに使われていた装置は「戸」「格子」と呼ばれる建具(たてぐ)です。
建具は木と和紙(障子紙、襖紙)で構成されていました。
和紙の主な原料は楮(こうぞ)、三又(みつまた)、雁皮(がんぴ)と呼ばれる植物繊維で、洋紙の木質パルプと異なります。
室内と屋外の境界には採光のために障子戸が使われていました。障子紙は、雨にぬれると破れやすくなります。
障子戸を雨から守るために外壁から張り出した軒によって「雨仕舞」としました。
それでも嵐になると横殴りの風に乗った雨水と木枝やよその屋根瓦などの飛来物が障子戸を直撃します。
雨戸は自然の脅威から家を守る装置となりました。
このような日本独自ともいえる建築様式から、詫び錆びという伝統的な美意識が生まれたのです。
自然素材に手を加えて、自然と折り合いをつけながら快適に暮らしてきた先人たちの知恵に敬意を表します。
陽当りのいい部屋は気持ちがいいものです。冬の太平洋側の地域は、晴天の日が多い。
外壁に大きな窓を設けると、部屋の奥まで暖かい日差しが届きます。
真夏の南中時の太陽は屋根の真上から照り付けます。
南側は大きな窓を設けても深い軒や庇が真上からの直射日光を遮ってくれます。
直射日光が入らなくても地面を照らした光が反射し、間接光となって室内の天井を明るくします。
西側に大きな窓を設けると、冬でも明るく暖かくて快適ですが、入射角度が低い夏の西日は軒下をかいくぐって強烈な日差しによって室内が眩しく、そして暑くなります。
窓を小さくするとか、よしずやすだれを窓の外に吊るして日ざしを和らげると涼やかで、ちょうどよい明かりになります。
北側に大きな窓を設けると、寒そうな予感を覚えますが、北面の庭は太陽の恵みを受けて花が咲き乱れます。花は太陽の方角、すなわち主人に向かって咲きますから、北に庭をつくると、咲き乱れる花々の美しい姿を室内から鑑賞することができます。
自然とうまく付きあうとはそういうことです。
太陽が西に沈むと、辺りは暗くなり夜がやってきます。
炉端に火をおこすとともに灯りをともして室内をほんのり明るくします。
夜は屋外からの採光を必要としません。
冷える夜は雨戸を閉ざして室内の温もりを保ちます。雨戸は防犯装置としても有用です。
雨戸の多くは杉板で造られます。杉は木材の中でも比較的比重が小さく軽量のため簡単に敷居の上を滑せることができます。
一般的に比重が小さい材料は断熱性に優れる傾向があります。また杉の木は、入手しやすい木材のため重宝されました。
木材の性質を見極めて適材適所に使うことは自然素材とうまく付きあうということです。
私はあかるい窓辺で 過ごすのが好きです。 仕事、読み書き、食事など、日中は照明器具を必要としません。 特に都会の住宅が密集している地域において、天窓は照明エネルギーの削減に貢献します。 太陽と暮らす小さな家に青空天井の導入を研究しているところです。
敷地に余裕があるなら離れに小さなビニールハウスのような温室を建てて野菜を育てたい。 ビニールに代えて断熱性の高いペアガラスで覆います。 その一角に椅子とテーブルを置いて、農作業のかたわら仕事や読書を楽しみたい。 日が暮れてもしばらくは余熱と土床の蓄熱で生活できます。 灯りは蓄電池内蔵LED照明。 太陽光温水器でつくった温水を床暖房に使うとさらに快適な暮らしを送ることができます。
もしも太陽熱エネルギーを真冬に活かすことができたなら・・・。
真夏の海水浴場を裸足で歩くと熱砂で飛び上がります。
あのパワーを真冬の床暖房に転用できたらどほれど気持ちがいいでしょう。
課題は、日本海側や北海道の雪に閉ざされる地域でどうやって冬の太陽と暮らすか。
これは難問です。
自然に逆らわず、窓の面積を小さくして、その分外壁の面積を増やせば外皮の熱還流率(UA値)が低くなり、冬でも快適に暮らすことができます。
白川郷の合掌造りのように外壁と開口部は妻面だけにして、残りの外皮はすべて屋根とすれば、雪下ろしも不要になります。
お天道様に逆らわなければ、ばちは当たらないでしょう。これは昔からの言い伝えです。
2026年2月7日