遠い思い出

震災前のこと。
福島県川内村。
人口三千人ほどのちいさな村。

2004年のこと。
 縁あって築100年のかやぶき民家で「ときどき田舎暮らし」。
 田舎暮らしなどしたことのなかった東京生まれの私にとって 里山での見聞はひとつひとつが新鮮、驚きに満ちたものです。 家づくりに携わる者として考えさせられることにもたくさん出会いました。
 今ではすっかり姿を消してしまったかやぶきこと「草屋根の家」。
 時代にとり残されて消滅しつつあるこの建築文化が、 実は来たる環境社会にとっては指針とすべき 「こころがまえ」 の宝庫であるように思えるのです。

あの日、3.11。

2011年3月16日、 川内村は全村避難を決定。
2012年1月30日、原発から半径20Km圏外にある村の一部が帰村宣言。
2016年6月14日、一部に残された避難指示が解除、村全域が避難解除に。

震災からまもなく10年。 川内村は未来に向けてすこしずつ歩をすすめています。

失われたものから教わる

 ときどき田舎暮らしの拠点だった茅葺き屋根の家ですが、現在はありません。 ときどき「村民」のように暮らした日々を振り返ると 失われたものの大きさ、 失われたものを取り戻すために この先かかるであろう遠い道のりを思わずにはいられません。
 2020年、欧州連合 (EU) はこれからの環境復興策として 「グリーンリカバリー」を提唱しています。 一度破壊された損失を取り戻すには より長い時間が必要だとの認識にもとづく考えです。

グローバル社会のモデルを思う

 現代の環境問題を「人災」と受け止める。そして「破壊からの復興」の道のりを考える。 EU「グリーンリカバリー」に同調するようにカナダやオーストラリアでも それぞれの地域の事情に応じた「脱炭素・循環型社会」 のあり方をめぐる基準づくりの検討を始めている模様です。 環境問題はグローバル問題との共通認識に立って ローカルモデルで解決を図ろうとする姿勢に 共感するものがあります。
川内村で過した日々を綴ったアーカイブ 「里山の草屋根より」
こころのふるさとの風景をご案内します。